日本三大秘湯の一つ、谷地温泉に泊まる――八甲田山に登る その六 | 楽土慢遊

日本三大秘湯の一つ、谷地温泉に泊まる――八甲田山に登る その六

谷地温泉
所在地:
青森県十和田市大字法量字谷地1
交 通:
JR「青森」駅からJRバス「十和田湖」行きで1時間40分、「谷地温泉」下車、徒歩5分

2012年8月16日(木):雨のち曇り:蔦温泉→八甲田・十和田ゴールドライン(JRバス)→谷地温泉

■(八甲田山に登る その五からのつづき)前回は蔦の七沼めぐりからビジターセンターに戻ってきたところで終わった。今度は蔦温泉に移動する。といっても湯に入るわけではない。

今回の計画を立てるときに、できれば蔦温泉を入れたかったのだが、酸ヶ湯、猿倉、谷地温泉のように八甲田の登山道と繋がっていないので諦めた。どんな温泉かは、蔦温泉旅館公式サイトをチェックしていただくのが手っ取り早い。写真がきれいで、内容も充実していて、魅力がよく伝わってくる。われわれがめぐってきたばかりの七沼にも触れられている。

山を歩くのは今日までで、明日は青森市街を散策する予定なので、蔦温泉に泊まることもできなかったわけではない。だが、登るのが南八甲田の山だと予定通りに下りてこられるとは限らない。その場合、谷地温泉なら最悪、猿倉から歩くこともできるが、蔦温泉となるとそうはいかないのだ。

蔦温泉旅館には、中央に建つ本館、その裏手の高台にある2階建ての別館、鉄筋コンクリート3階建ての西館、泉響の湯がある湯棟などの建物がある。

大正7年に建てられたという本館は、やはり風情がある。1階には正面玄関、宴会場、浴場があり、2階が客室になっている。

本館の右手には、泉響の湯がある湯棟が建っている。バスを一本遅らせて立ち寄り湯という手もあるが、とにかく予報ではこれから荒れ模様になるはずなので、食事だけしたら谷地温泉に向かうことにする。

本館の左手には、鉄筋コンクリート3階建ての西館。宴会場、食事処、客室が入っている。

バス停の前に建つ売店に立ち寄る。奥にテーブルがあり、食事もできるので、そばを食べた。あとは店の前のベンチで待機し、青森行きのバスに乗り込んだ。

谷地温泉のバス停から旅館までは5分ほど歩く。14:00前に旅館に到着した。谷地温泉も山のなかの一軒宿だ。

谷地温泉の建物は、入り口から奥に向かって本館、西館、東館に分かれていて、われわれが泊まるのは本館の2階の部屋。外を見ると荒れるどころか明るくなってきているので、宿のまわりを散策することにする。

宿のまわりには二種類の遊歩道があった。1番目のコースは所要時間10~15分。食堂と本館の間の通路から建物の裏手に出て、小さな沢に沿って自然林を一周する。

裏手から道なりに進み、沢を渡ると透明な水をたたえた小さな薬師池にたどり着く。マップでは、「ミズバショウが咲き、イワナが泳ぐ一年中冷たい水」と説明されていた。その池の先には谷地神社が建っている。「谷地温泉の守り神、子宝の神様根精様と淡島様が鎮座」というのがマップの説明。

筆者が興味をそそられたのは、谷地神社の右手、少し離れたところにひっそりと立つ石碑だ。そこには高田大岳大権現と刻まれている。谷地温泉は高田大岳の登山口であり、こちらは明らかに山岳信仰に関わっている。石碑の前にはわずかではあるが賽銭も見られるので、心にとめる人もいるようだ。

薬師池に谷地神社に大権現。この地域では神仏分離がどのようなものであったのか定かではないが、一度引き離されたものがこの場所に寄せ集められているようにも見える。

2番目のコースは、宿から車道を渡った向かいにあり、所要時間20~30分、「ブナの原生林の森林浴とミズバショウの群落、湿原に湧くめずらしい温泉を展望」と書かれている。こちらにはそのコース以外におまけがある。

まずコースの手前に小さな展望台があって、宿の北東の方角に広がる谷地湿原とその向こうにそびえる黒森(1023m)が眺められる。湿原にいろいろ花も咲いていて美しい光景だった。

展望を満喫したら、その左手、高田大岳の登山口も兼ねている階段を登っていく。上は細長い広場になっていて、そこにも小さな展望台があって、宿の建物と樹林の向こうに南八甲田の山々が眺められるようになっている。ただし、高度がそれほどあるわけではないので、見えるのは赤倉岳と猿倉岳と駒ヶ峰の上部だけなので、あまりインパクトはない。ただ七沼めぐりのときに長沼から見た赤倉岳がこちらから見るとけっこうずんぐりしているように見えるのが面白かった。

ということで、広場から森林の遊歩道に入っていくことに。こじんまりとしたコースを想像していたのだが、木道がいろいろ分かれているし、樹木や植物の種類も豊富で、退屈しない。コースによっては背の高い草が繁茂していて、ヤブこぎに近くなる場所もある。

いずれここから高田大岳に登るときのために、遊歩道の端の方にある登山道も確認した。ちなみに地図には、温泉から標高1000m付近までひどいぬかるみと書かれている。

遊歩道の中央の奥まったところにも小さな展望台があり、温泉の湧く池を見下ろせるようになっている。奥の白く変色している部分から湧いているのだろうか。

散策を終えて部屋に戻る。夕食までにはまだ時間があるので、ひと風呂浴びることに。ヒバ造りの浴室は秘湯の趣きを漂わせている。浴槽は温めの下の湯(38度)と熱めの上の湯(42度)に分かれている。その仕切りのところに入浴の仕方が書かれている。まずは下の湯の方に30分くらいゆっくりとつかって体をならし、それから少しずつ時間を長くしていって1時間くらいのところで上がり、上の湯に5~10分くらいつかって上がる。これを日に2~4回を上限として繰り返す。

この案内に従ってまずは下の湯にゆっくりつかる。これがなんとも気持ちいい。浴槽の底板の間から、ときどき泡が浮いてくる。それが地からわき出るものにつかっていることを実感させる。体の力が抜け、眠りそうになる。35分ほどつかって上の湯に入る。こちらは熱めでそう長くはつかっていられない。しっかり5分で上がる。心身ともにくつろぎ、やみつきになりそうだ。

夕食は食堂でいただく。宿泊する部屋によって席が決まっている。野菜がたくさん入った豆乳仕立ての秘湯鍋がセルフサービスでおかわり自由、ビールも含めてドリンクが飲み放題。隣の席に座った年配のご夫婦が鍋を勧めるのでさっそく食べてみるが、これがいける。当然おかわり。

食休みしたあとでまたお風呂へ。先ほどは5、6人の先客がいたが、今度は貸切で下の湯にじっくりとつかる。一泊だけではなく長逗留したくなる。今回は酸ヶ湯、猿倉、谷地とまわり、酸ヶ湯の千人風呂も、猿倉の夜の露天もほんとうに気持ちよかったが、この谷地の秘湯がいちばん好きになった。ぜひまた来たい。そのときにはもちろん蔦温泉にも泊まるつもりだ。

八甲田山に登る その七につづく)

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