2012年8月15日(水):晴れ:酸ヶ湯温泉→地獄湯の沢→仙人岱→小岳・高田大岳分岐→小岳山頂→小岳・高田大岳分岐→大岳山頂
■(八甲田山に登る その二からのつづき)酸ヶ湯温泉の湯治部に泊まり、4:00に起床。外はまだ暗い。昨晩は千人風呂につかり、よく眠れた。着替えをし、荷物を準備し、朝食の代わりに準備してもらった弁当もつめる。本日は小岳と大岳に登る。大岳に登ったあとはまた毛無岱を経て酸ヶ湯に下りてくるので、山歩きに必要のない荷物は宿の待合室に置いていく。山を下りてきたらお風呂を使ってよいとのこと、ありがたい。
酸ヶ湯温泉を5:00に出発。あたりはまだ薄暗い。宿から少し上がったところに酸ヶ湯公共駐車場があり、その東端、道を隔てた反対側にたつ鳥居が登山口になる。しばらくは岩がごろごろ転がる道を登っていく。
すぐにダケカンバの樹林に入る。まだ日がさしていないので、より暗く感じる。
南側の視界が開ける。南八甲田方面に朝日があたりだした。横岳や櫛ヶ峰上岳がきれいに見える。周囲がアオモリトドマツの樹林に変わり、赤茶けた土が露出し、大きな岩が転がる地獄湯の沢に出る。
硫黄の臭いが強くなる。沢に沿って登り、角材の橋で沢を渡り、さらに登っていく。振り返ってみると、谷の向こう、彼方に岩木山がくっきりと見える。
斜面を登り切ると平坦な笹原が開ける。澄んだ湧き水がさらさらと流れる仙人岱湿原に入っていく。
沢に沿うように木道を進んでいくと、甲状の大岳が姿を現す。「山と高原地図」のガイドに、八甲田の山々はだいたい甲状で、「八甲というのはこれから出たものといわれ」と書かれていたが、確かに一理ある。
湿原はアオモリトドマツの樹林に取り囲まれている。その樹林の向こうに、仙人岱避難小屋の屋根が見えている。
小岳、高田大岳への分岐には道標が立っている。その道標に従って、まずは小岳に向かう。アオモリトドマツと笹薮のなかを進む。細い道はえぐられているところもあり、角材で整備されている。
藪漕ぎしつつ樹林帯を抜け、上部のハイマツ帯に出ると、一気に視界が開ける。
ハイマツ帯の細い道を進み、高度を上げていくと、大岳と井戸岳が見渡せるようになる。
7:30頃に小岳の山頂に到着。小岳の分岐に入るまでは他の登山客に出会ったが、こちらに来る人は多くないので、頂上は貸切だ。展望までは下調べしてこなかったが、360度のパノラマに息を飲む。
東側には高田大岳が頭を出している。小岳から高田大岳へのコースを行けば、日本三大秘湯のひとつといわれる谷地温泉に下ることができる。その下りは少々難路のようだが、いずれ行ってみたいと思う。その谷地温泉には3日目の夜に泊まる予定だ。
東から北に目を向けると、弧を描く海岸線がはっきりと見える。陸奥湾を囲むように下北半島がのびている。
西にのびる半島を見渡すと湾を囲んでいるのがよくわかる。
南に目を向けると南八甲田連峰が見渡せる。八甲田ロープウェーの山頂公園駅の展望台から見たときよりも迫力がある。この天気がもってくれれば、明日の今頃は向こうに登っているはずだが、どうも雲行きが怪しい。
酸ヶ湯温泉を出てからここまで、チーズやソーセージなどの予備の食料でしのいできたので、静かな山頂で食事にすることにする。
ほとんどの宿では、早朝に出発するために朝食の代わりにお弁当を頼むと、握り飯と漬物になるが、酸ヶ湯の場合は本格的なお弁当だった。海老天、鮭、筋子、ウィンナー、ハム、シュウマイ、かまぼこ、漬物。まさかそんなメニューを山頂でいただけるとは思っていなかった。絶景を眺めながらいただく弁当の味は格別だ。ただし、一気に満腹にはなりたくなかったので、悪くなりそうなものから平らげ、あとは次の休憩まで残しておくことにする。
食事を終え、先ほどの分岐に向かって再びハイマツ帯を下る。彼方に岩木山が見える。
分岐に出て、大岳に向かう登山道に入ったところから小岳を振り返る。アオモリトドマツとハイマツ帯を分ける森林限界がよくわかる。
大岳の登りに入る手前には、一面のお花畑が広がり、目を和ませてくれる。
お花畑にウサギギクが咲いていた。
ミヤマリンドウも咲いていた。
アオモリトドマツの樹林帯を抜けると、森林限界になり、視界が開ける。火山礫を金網で固定した急な斜面を登っていく。
途中に平坦な場所があり、鏡沼が水をたたえている。八甲田火山の噴火口のひとつで、サンショウウオも生息しているという。
再び、丸木の階段がつけられた急な斜面を登っていく。
山頂の手前に山の神を祀った小さな祠がある。
間もなく9:30になろうかという時間に大岳の山頂に到着。山頂はかなり広い。八甲田にきたら誰もが登るであろう山なので、すでに10数人の登山客がいた。こちらも360度のパノラマが広がっている。
山頂から北側の展望。前嶽の向こうに青森市街、陸奥湾、下北半島が一望できる。昨日ロープウェーから見たときよりもくっきりと見える。その他の展望については、その四の記事で紹介することにしたい。
聞くところによれば、この大岳の山頂も昔は小岳のようにハイマツで覆われていたらしい。いまではそれが失われ、地表がむき出しになっている。一度失われてしまった自然を取り戻すのは容易なことではない。(八甲田山に登る その四につづく)