大岳から酸ヶ湯に下り、猿倉温泉へ――八甲田山に登る その四 | 楽土慢遊

大岳から酸ヶ湯に下り、猿倉温泉へ――八甲田山に登る その四

猿倉温泉
所在地:
[猿倉温泉] 青森県十和田市奥瀬猿倉1番地
交 通:
[猿倉温泉] JR東北本線青森駅からJRバス十和田湖行き90分、 猿倉温泉下車徒歩10分

2012年8月15日(水):晴れ:八甲田大岳山頂→大岳避難小屋→毛無岱分岐→上毛無岱→階段→下毛無岱→城ヶ倉分岐→湯坂→酸ヶ湯温泉→八甲田十和田ゴールドライン(JRバス)→猿倉温泉バス停→猿倉温泉(泊)

■(八甲田山に登る その三からのつづき)前回は八甲田大岳の山頂に着き、陸奥湾や青森市街を眺めたところで終わった。われわれが小岳の山頂を出発したのが8:10頃でそれから80分も経っていないので、ここでは特に休憩をとらず、さらりと展望を楽しむだけにする。小岳の貸切状態の展望でかなりすでにかなり満足していたということもある。

広い山頂をゆっくりまわり、変化する展望を楽しむ。

山頂の縁から火口のあとと思われる深いくぼみと、その向こうの小岳と大岳を眺める。写真では小岳が斜めに切れているように見えるかもしれないが、緑に覆われた斜めのラインはくぼみの反対側の縁である。

昨日、ロープウェーの山頂公園駅から登った赤倉岳。その向こうに陸奥湾や下北半島がくっきりと見える。

山頂からは仙人岱に戻るのではなく、大岳の北面を大岳避難小屋に向かって下る。

下山道の向かいにそびえているのは井戸岳。かつての火口と思われるくぼみの縁に、ジグザグにつけられた道が見える。谷間には、緑のなかに避難小屋の建物が小さく見える。

大岳避難小屋に到着。小屋の前にはベンチがあるので、ここで休憩することにする。

小屋にはトイレがある。内部は2階のスペースもあり、清潔で広く見える。定員は20名とのこと。

ベンチに座り、大岳を眺めながら残りの弁当を平らげる。このベンチのスペースは広々としていて気持ちがいい。休憩にはもってこいの場所だ。

避難小屋からは西に向かって下っていく。アオモリトドマツの樹林帯に入り、展望のない急な道を下っていくと一気に視界が開ける。毛無岱と呼ばれる広大な湿原に入る。

湿原に入るところで、昨日歩いた田茂萢湿原の散策ルートから分かれてきた道と合流する。田茂萢と毛無岱を結ぶトレッキングコースは毛無パラダイスラインと呼ばれている。空がだいぶ曇ってきたが、雨が降る気配はない。

東西に長くのびる大湿原は、東の上毛無岱と西の下毛無岱からなる。まず上毛無岱を進む。群生するキンコウカの黄色い花が目についた。

湿原には池や沼が散在している。その沼が鏡となって空を映している。湿原の向こうに見えているのは南八甲田連峰。中央に見えるのが櫛ヶ峰上岳。

上毛無岱から樹林に入り、木製の長い階段を下っていく。上毛無岱と下毛無岱を結ぶ階段で、紅葉の時期にはこの階段の途中からの展望が圧巻だそうで、渋滞が起こったりもするようだ。

下毛無岱からの展望。赤倉岳、井戸岳、大岳がだいぶ遠くなった。

湿原の木道が左にカーブし、湿原からブナの樹林に入っていく。小さな沢を渡りつつ進み、城ヶ倉温泉への分岐を通過する。

途中で、石がひっそりと祀られていた。その由来がわからないのが残念だ。最後に湯坂を下り、12:30をまわった頃に酸ヶ湯温泉に戻ってきた。

猿倉温泉に移動するのに利用するJRバスが出るのは14:51なので、まだたっぷり時間がある。まず酸ヶ湯の売店の外で荷物をおろし、ビールを購入して喉を潤す。ひと息ついたところで、荷物を待合所に置き、タオルを借りて玉の湯に向かう。今日は時間が早いので昨日のように混んではいない。汗を流し、湯船にゆっくりつかる。

湯上りはロビーでくつろぐ。待合所で荷物を整理し、売店で土産物を購入し、バス停で待機する。時間通りに到着したJRバスに乗り猿倉温泉に向かう。(以下、地図の下につづく)

バスに乗ること10分で猿倉温泉のバス停に到着。猿倉温泉旅館までは南にのびる車道を10分ほど歩く。

元湯 猿倉温泉も酸ヶ湯温泉と同じように山のなかの一軒宿だ。到着するとまず目に入るのが三角屋根の新館、その奥に本館、さらにその奥に離れが並んでいる。本館が和室で、新館と離れは洋室。

われわれが泊まるのは新館の2階の部屋。本当は料金が割安の和室が希望だったが、空きがなく、トイレに加えてロフトまでついた洋室に泊まることになった。まあときには違う雰囲気を味わうのもいいだろうということで。

部屋に荷物を置き、まずはまだ明るいうちに明日のコースのチェックをすることに。旅館のご主人に聞いても、明日の天候は荒れ模様ということで、登る可能性は限りなく低いのだが。登山道が整備されている北八甲田の山々であれば悪天候でも登るつもりだったが、悪路といわれる南八甲田でいきなり無理をするつもりはない。

南八甲田への登山道は猿倉温泉の奥にある。旅館の離れを過ぎた先には、入山者のための猿倉休憩所が建っている。この休憩所はトイレも備えている。休憩所には十和田警察署の[遭難・道迷い注意!]という張り紙がある。

その内容はだいたい以下のようなもの。「南八甲田山系の登山道は歩きにくいです□足元はすべりやすい□転倒の危険あり注意□ヤブこぎによる体力消耗に注意□迷ったら動かず風雨を避け捜索隊・ヘリを待つ。ヘリの音~広いところでタオルを振る。夜間は移動しない」この警告で北八甲田とは環境や条件が違うことがよくわかる。

この休憩所の奥に登山道の入り口がある。そこには東北森林管理局による[八甲田山森林生物遺伝資源保存林]という立て札がある。内容は以下のようなもの。「天然林は、多様な動植物、微生物が生息・生育し、生物多様性に富むため、遺伝子の宝庫といわれています。奥羽山脈の北端に位置する八甲田連峰は、自然状態が十分に保存された天然林が広く分布しています。このため八甲田連峰を代表する樹木等の遺伝資源を重点的に保存するために保存林を設定しています」

南八甲田の登山道があまり整備されていないのは、この保存との関連もあるようだ。温泉から見える猿倉岳だけでも登ってみたいものだとは思うが、この道もヤブこぎがあり、悪天候では避けるべきだろう。部屋に戻ってテレビで明日の予報をチェックするがやはり難しそうだ。窓からは北八甲田の高田大岳が見えるが、上部はほとんど雲に隠れている。

部屋で一休みして、まずは風呂に入るところだが、先ほど酸ヶ湯で汗を流してきているので、あとにすることに。今日は明るくなる前に起床してよく動いたので、ベッドで軽く横になる。夕食は新館1Fの食事処でいただく。宿のHPには、米は低農薬自然乾燥米、野菜は80%が低農薬無農薬野菜と書かれていた。刺身、天ぷら(揚げた熱々で出される)、焼き魚、小鉢がいろいろ。どれも丁寧に調理され、器にきれいに盛り付けられている。たくさん食べる方ではない筆者にはボリュームも適量だった。

部屋で食休みして、いよいよお風呂へ。新館と本館のふたつの風呂に入れるが、まずは新館の風呂へ。内湯はぬる湯と熱めの湯と蒸し風呂の三種類で、外に露天風呂がある。先客はひとりだけだった。まずは内湯につかる。ぬる湯につかっているときに、ふと浴槽の縁の石を見ると、黒くてとても小さなカエルがいた。本当に小さいし、石に対して保護色になっているようなので、気づく人は少ないと思うが、珍しいものを見られた。

今度は露天風呂へ。おそらくこちらが、昼間であれば高田大岳が眺められる露天だと思われる。しおぼろげな光のなかで、草むらから聞こえる蟲の声に耳を傾けながら湯につかっていると、心が穏やかになり、時がたつのを忘れる。

部屋でくつろぎ、夜が更けてから今度は本館の風呂へ。こちらは露天風呂だけで、ぬる湯と少し熱めの湯に分かれている。目の前にある闇に包まれた樹林の静けさがなんとも心地よい。すっかりリラックスし、部屋に戻って湯上りのビールを飲み、眠りについた。(八甲田山に登る その五につづく)

Oisix(おいしっくす)

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