榛名神社から修験の山・天狗山に登る――夏の伊香保・榛名 その六 | 楽土慢遊

榛名神社から修験の山・天狗山に登る――夏の伊香保・榛名 その六

所在地:
群馬県高崎市榛名山町
交 通:
JR高崎駅西口より群馬バス・本郷経由榛名湖行き、榛名神社前下車、徒歩15分

2013年7月14日(日):晴れときどき曇り:榛名神社 随神門→一合目・地蔵峠分岐→天狗山登山口→四合目・鏡台山コル→天狗山山頂→四合目・鏡台山コル→天狗山登山口→榛名神社 随神門

Sierra Trading Post

■(夏の伊香保・榛名 その五のつづき)榛名神社に参詣したので、今度は山歩きだ。実際に登ったのは榛名山塊の南に位置する天狗山(榛名天狗山)だが、最初からそのつもりだったわけではない。当初は神社から外輪山を越えて榛名湖に出ようと漠然と考えていた。ところが、勘違いというか成り行きで、目的地が変わってしまった。

きっかけは山好きのタクシーの運転手さんとの会話だ。運転手さんが天狗山に登った話や他の山の話をしているうちに、話が混線してしまった。そして、神社の前に着いたときには、運転手さんに榛名湖方面のつもりで、天狗山の登山口に向かう道の確認をしていた。

そんなわけで、神社に参詣したあとで榛名湖方面に向かうのであれば参道の途中から榛名川沿いの道に下りなければならなかったのだが、われわれは迷わず随神門まで戻り、門に向かって右にのびる道を進んでしまった。

なにかおかしいと気づいたのは、一合目・地蔵峠分岐まできたときだった。しかし筆者は、榛名神社の額殿で、額に囲まれて鼻を突き出した天狗の面を思い出し、天狗山への興味が膨らみ、引き返す気はなくなっていた。手元にある榛名神社散策マップでは、天狗山について、登山コースも整備されていると書かれていたので、行けるところまで行ってみることにした。

ちなみに、帰宅してから確認したら、その二で触れた今井善一郎の論考「山の神々」(『榛名と伊香保』(みやま文庫7、1962)所収)では、天狗山が以下のように短く紹介されていた。「榛名山の南面、室田の正北に当って天狗山がある。こゝにも籠り堂が今も残り、山頂至る処数百の碑石が立ち、昔から行者の修業場として盛んであったが、近年はやゝさびれて祭日等も不確定になっている。名の如く天狗の信仰がその中心であり、巫覡の修練の一中心であった」

地蔵峠分岐を直進し、林道をしばらく歩くと左手に天狗山登山口の標識が現れる。10:20頃に登り始める。登山道は、コンクリートの堰のわきを通過すると気持ちのいい樹林になる。その先は、ガレたところもあり、ロープが張られたりもしているが、それほどきつくない。

鏡台山コルの分岐に到着。昨日の水沢山では体調不良でまいったが、そのあと丸本館でゆっくり温泉に浸かり、ぐっすり眠ったので今日は体調は問題ない。分岐を右に行けば鏡台山の山頂まではわずかな距離だが、本日は先がどうなるかわからないので直接、天狗山を目指すことに。

鏡台山コルからは巻き道がつづく。登山道わきにヤマアジサイが咲いている場所があった。

巻き道から笹と樹林に囲まれた平坦な道に変わったので、ひと休みすることに。だいぶ汗をかいているので、わずかに吹く風も気持ちがいい。

地蔵峠分岐を過ぎてからは、まだ一人も登山者に出会っていない。静かな山歩きである。道の脇に座って小腹を満たすあいだ、目の前を虻が忙しく飛び回っていた。

休憩を終え出発。しばらくゆるい傾斜をのぼっていくと赤い鳥居がたつ分岐に出る。ここを右に行けば天狗山・西峰に出るが、われわれは寄り道をせず、鳥居をくぐって天狗山・山頂に向かう。

道の右側には奉納された小さな赤い鳥居が並んでいる。

岩場をのぼると山頂はすぐそこだ。

山頂に到着。展望はないが、周囲を見回す前にとにかくまず道標が気になった。われわれは計画なしに登ってきただけに、落ち着く前に下りのことを考えておかなければならないが、道標にある「大日陰」がどういう場所なのかがわからない。

するとそのとき、道の先、木々の向こうから人の話し声が聞こえてきた。声がする方向に進むと、そこには展望が開けた岩場があり、われわれより年配の3人の男女が休憩しているところだった。

さっそく道のことを尋ねると、下山してから榛名湖方面に移動したいのであれば、榛名神社まで戻り、そこからバスに乗るしかないということだった。その話の流れで、ちょっと怖い話を聞かせてくれた。彼らが以前、天狗山に登って大日陰に下ったときに、道端でスルメのようになった登山者を拾ったことがあるというのだ。

その人はなんとかなるだろうと思って大日陰に下ったところが、延々と車道を彷徨うことになり、水も尽きてしまったらしい。その人は彼らに拾われて本当に助かったと思ったことだろう。山歩きの怖いところだ。われわれはもちろん、そこまでひどくはないが過去に痛い目にあっているので、大日陰がどんな場所かわからなければ戻るつもりでいた。

下りの道が決まったので落ち着くことに。年配の3人が出発したので、岩場は貸切になった。南西から南東にかけて展望が開けている。天狗山・西峰の左手に浅間山が見える。岩場は先のほうまで行くとかなり高度感が味わえる。展望を楽しんでいるうちに12:00になったので、岩に座って昼食をとることにする。

岩場の道に近い場所には赤い鳥居がたち、大岩のうえにふたつの小さな祠が祀られている。

この季節には生い茂る青葉に隠れてわかりにくいが、山頂周辺には大岩のうえにいくつも石碑が立ち、修験の山の空気を醸しだしている。

食事を終えたわれわれは、来た道を引き返し、榛名神社に向かうことに。

これは家に戻って調べてみてわかったことだが、神社から山頂に至るもうひとつのコース、一合目の分岐を左に行って地蔵峠に向かい、鐘原ヶ岳を経由するコースには、多くの石碑が残っているらしい。今回歩いたコースでちょっと不思議に思ったのは、修験の山にしては歩きやすいということだった。鐘原ヶ岳経由のコースには急登やヤセ尾根などがあり、そちらが行場になっていたのだろう。次に榛名神社に参詣するときには、地蔵峠・鐘原ヶ岳のコースから登り、今回のコースから下ることにしたいと思う。

夏の伊香保・榛名 その七につづく)

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