ロープウェイ山麓駅から峰の茶屋跡避難小屋へ―紅葉の那須岳 その一 | 楽土慢遊

ロープウェイ山麓駅から峰の茶屋跡避難小屋へ―紅葉の那須岳 その一

朝日岳と鬼面山
所在地:
栃木県那須郡那須町、那須塩原市、福島県西白河郡西郷村
交 通:
JR東北本線・黒磯駅→路線バス山麓駅行きにて60分、終点下車/那須塩原駅→路線バス山麓駅行きにて70分、終点下車

2009年9月21日(月):晴れ:東京駅→那須塩原駅→黒磯駅→ロープウェイ山麓駅→峠の茶屋→峰の茶屋跡避難小屋

■那須連山に囲まれた秘湯・三斗小屋温泉に泊まり、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳に登る計画を立てた。いつも書いていることではあるが、山の大きさとか深さというのは、必ずしも山そのもので決まるわけではなく、コースによっても左右される(もちろんどんなコースであろうが、頂上に立てばそれで満足という人には関係のない話ではあるが…)。

那須岳では江戸時代から昭和の前半の頃まで信仰登山が行われていた。それがどのようなものであったのか、興味があるかたには、日本温泉文化研究会・編『温泉の文化誌 論集【温泉学Ⅰ】』(岩田書院)に収められた廣本祥己「山岳信仰を支えた温泉――那須岳を例として――」を読むことをお勧めしたい。たいへん興味深い論考だ。

ここではその論考から基本的なことだけを引用しておきたい。まず、那須岳の山岳信仰だった白湯山・高湯山信仰について。

白湯山・高湯山は、那須岳の主峰、茶臼岳の西側八合目に湧出する白濁した温泉と、上部に存在する巨岩を御神体とした。御神体は「御宝前」と称され、那須岳の総奥の院として神聖視された。白湯山・高湯山という名称は、この御宝前の温泉に由来したものと思われる

さてそこで登山口の話になる。かつての信仰登山では、登山口は二ヶ所に存在した。ひとつは、本日われわれが宿泊する三斗小屋温泉から下ったところに存在した三斗小屋宿で(こちらについては、三斗小屋温泉に向かう部分でまた触れたいと思う)、もうひとつが、茶臼岳南麓にある那須湯本温泉だ。ではどんな登山が行われていたのか、再び引用してみる。

そして、三斗小屋口において、御宝前および霊場は「白湯山」と呼称され、湯本口においては「高湯山」と呼称された。(中略)参詣者は、それぞれの登山口より、御宝前、茶臼岳、その北方の朝日岳等に設けられた二八ヶ所の拝所を登拝した。この登拝形式は「三山掛け」と呼称され、三斗小屋口からは御宝前、茶臼岳、朝日岳の順に、湯本口からは茶臼岳、御宝前、朝日岳の順に登拝が行われた。このうち、茶臼岳には「月山」、朝日岳には「毘沙門岳の別称が用いられた

そうした歴史を踏まえるなら、まずは昔からある古い登山道を踏みしめてみたくなる。つまり、那須湯本温泉から湯本温泉神社の境内を抜けて牛ヶ首の直下に出る高雄口登山道だ。この高雄口登山道は茶臼岳山頂まで4時間以上かかるので、山も大きく、深くなる。ちなみに「山と高原地図」の冊子には、このコースについて「有料道路ができ、ロープウェイができてからは、湯本温泉から登りに利用する人は少なくなった。現在は茶臼岳や三斗小屋方面からの下りに利用するのが主である」とある。

ということで、当初の予定では、一日目はこの高雄口登山道で茶臼岳に登り、三斗小屋温泉に泊まり、二日目に朝日岳と三本槍岳に登るつもりだった。ところが、二日目の天気があまりよくなさそうなので、今回は仕方なく古い登山道を諦め、バスでロープウェイ山麓駅まで行き、一日目に茶臼岳と朝日岳に登る計画に変更した。次に来るときにはぜひこのコースを行きたいと思う。

早朝に家を出て、東京駅から新幹線に乗り、那須塩原駅で東北本線に乗り換え、7:47に黒磯駅に到着。駅から8:10発のバスに乗って、終点のロープウェイ山麓駅に向かう。

バスが街中を抜け、那珂川を渡って進んでいくと次第にリゾート地の風景に変わる。国道17号線の両側には様々な娯楽施設や食事処が並んでいるが、営業をやめ、廃屋になっている建物もある。看板や外装が派手なだけに、それが廃墟化していると逆に目につくところがある。

黒磯駅から約60分でロープウェイ山麓駅に到着。ここからロープウェイに乗って山頂駅まで行き、そこから登るという楽なコースもあるが、われわれは茶臼岳の北面につけられた登山道を峰の茶屋跡避難小屋に向かう。天気は快晴で、山麓駅の駐車場からは山頂駅や朝日岳がよく見える。

そこから車道に沿って10分ほど道を上がっていくと峠の茶屋。その駐車場の脇から登山道に入る。信仰の山なので登山口には鳥居がたち、それをくぐると赤い毛糸の帽子をかぶった狛犬が控えている。その先にも岩のくぼみに石灯籠や石の祠などがある。

最初は樹林のなかを行くが、数分進んだだけで森林限界に達し、一気に視界がひらける。

ここからは、茶臼岳の北面をまいていく一本道を進む。まず正面に茶臼岳の一部が見える。周囲はツツジなどの低木が色づいていて美しい。

右手には朝日岳がそびえる。それを眺めながら、緩やかな傾斜の道を登っていく。

目指す峰の茶屋跡避難小屋までのほぼ中間点に立派な道標がある。峠の茶屋まで0.7km、峰の茶屋まで0.8kmと刻まれている。

那須岳の山々はどれも個性的で、変化に富む展望が楽しめる。朝日岳が間近に迫ってくると、その奥に剣が峰がよく見えるようになる。剣が峰は、峰の茶屋と朝日岳のあいだにそびえている。

少し振り返ると、朝日岳から鬼面山にかけて緑のスロープが広がり、まったく違った景観を生み出している。

朝日岳も登山道を進むにしたがって山容を変える。さっきから見ていた東側は植物に覆われているが、西側に回りこむと、荒々しい岩肌の険しい山のイメージになる。

間もなく切れ込んだ深い谷の向こうに小さく避難小屋が見えてくる。

峰の茶屋跡手前のこのポイント、地図にはお花畑のマークとともにリンドウと書かれているが、確かに登山道のわきにはリンドウがたくさん咲いていた。

たいした距離を歩いているわけではないが、たどってきたコースを振り返ってみると高度感が増している。

鬼面山の緑や赤と雲海のコントラストが美しい。

出発してから1時間弱で峰の茶屋跡避難小屋に到着。ここは、茶臼岳・南月山方面、朝日岳方面、三斗小屋温泉方面への分岐点になっている。人が吹き飛ばされるほどの強風で有名な場所だが、今日はほとんど風がない。

ここからは茶臼岳の噴気孔がよく見える。小屋の近くの岩に腰掛けて、軽く休憩することに。

紅葉の那須岳 その二につづく)

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